フィッシャーの膜厚測定には、電磁式・渦電流式・渦電流位相式・ホール効果磁気式・電気抵抗式・蛍光X線式・電量分析式(電解液式)など測定物に合わせて、様々な膜厚測定の原理を⽤いた⽅式が選択できます。
DIN EN ISO 2178準拠の方式。低周波交流電磁⽯の⼊ったプローブの先端に磁性体を近づけると、磁⽯が磁性体をひきつけることに対する反作⽤(電磁誘導)がおき、2者間の距離のわずかな変化に対応して、2次コイルの電圧が変化します。この変化を利⽤して⽪膜の厚さを測るものです。電磁式は、下地が鉄などの磁性⾦属の場合に使⽤できます。
(注)下地が磁性体であることが条件となります。プローブから磁性下地までの距離を測っているので、プローブの密着度・⽪膜の表⾯粗さなどが測定に影響します。磁性⾦属(鉄、鋼など)素地上の⾮磁性⽪膜(メッキ、ペイント、樹脂膜など)の測定
溶融亜鉛めっきの膜厚管理に(JIS H 8641およびJIS H 0401改正:電磁式膜厚計を用いた膜厚管理)
DIN EN ISO 2360準拠の方式。高周波電界によって非磁性金属表面に誘起される渦電流の大きさと磁界・金属表面の距離(皮膜の厚み)との電気的相関性を利用して、金属上の絶縁性皮膜の厚さを測るものです。
高周波交流(2MHz~)により交流磁界を発生させるコイルの入ったプローブを導電性非磁性金属表面に近づけると、高周波交流の電流により金属表面に渦状の電流が発生します。渦電流は磁界を打ち消す方向に流れるので発信機からの電流は抵抗を受けます。その大きさは母材特性とプローブからの距離(膜厚)と相関性があるので膜厚に変換します。
DIN EN ISO 21968準拠による、入力側の高周波磁界と被測定膜上の渦電流との位相差を厚さに変換します。各プローブで許容されている範囲内において、プローブと被測定膜の距離は位相差に影響しないので、プローブを密着している必要がなく膜厚測定ができます。そのため、パシベーション膜があるPC基板上のCuや、ペイント後の車両鋼板上のZnメッキ厚などが測れます。
導電率の差が十分にある非磁性金属上の非磁性皮膜:銅や真鍮などの低導電率の非磁性素地上の高導電率の非磁性皮膜
X線管から発生した一次X線を試料物質にあてると、その原子核から電子をたたき出します。このとき内殻にできた空孔へ向かって、外殻から電子が落ちてきます。このポジション変化の過程で原子は特定の元素に特有の波長を持った二次X線(蛍光X線)を放出します。複数の元素からの蛍光X線を半導体検出器などによって種類と強度をスペクトル分析します。
それぞれの波長から元素の種類を特定し、且つ強度から元素の量を確定します。つまり、同じ測定で定性分析(素材分析)と定量分析(膜厚測定)が同時にできます。フィッシャー社のED-XRF装置(エネルギー分散型蛍光X線分析器)では高度なソフトウエア処理などにより、最高24種類の元素の同時分析が可能になっています。
DIN EN 14571準拠の接触式測定法。4つの測定端子を測定面に接触させて、外側2端子より電流を流しながら内側2端子間の電圧降下度合いを測定します。Cu(銅)などの厚みは導電率に相関しているので計算により膜厚を求めています。
多層のプリント回路基板のCu膜厚を測るのに向いており、DC仕様で電磁誘導が起きないので多層基板や両面基板などの場合、絶縁層を経た隣接する裏面のCu層の影響を受けずに表面のCu膜厚を正確に測定することができます。フィッシャー社製膜厚計には、測定プローブの端子幅が、4mmと26mmタイプがあります。
ISO2178準拠の接触式のNi膜厚測定方式。永久磁石を使用した接触式でNiなどの磁性金属皮膜が非磁性下地上にある場合などに使用します。磁性金属膜厚が永久磁石の磁場に与える度合いを起電力の変化としてホール効果センサーで測定し膜厚に変換します。電磁式に比べ渦電流による特性劣化がないため厚物の測定に向いています。
非磁性材上の電解Niメッキ:Al上のNiメッキ
磁性体上の非鉄金属膜:鋼、Fe上のCu、Al、Pb皮膜
DIN EN ISO 2177準拠の電解式(クーロメトリ法)。これは制御された電流を使用して電解液により金属基板または非鉄金属基板から金属皮膜を溶解する処理、すなわち電気メッキプロセスを逆転した処理(メッキ剥離)が含まれます。メッキ剥離に必要な電流は、取り除く金属の質量に正比例します。
テストする電流と面積の両方が一定に維持される場合、メッキ剥離時間と膜厚間に明確な相関性が生じます。
STEP試験(膜厚および電位差の同時測定)は、多重ニッケル皮膜における個々の層の電位差と、個々の膜厚を同時に測定する手法です。