装飾用のクロムコート部品は、ほとんどの自動車両に使用されています。
小型車では銀色が車メーカーのロゴに使用されますが、高級車ではダッシュボード上の部品やフロントグリルなどにクロム仕上げが採用されます。
これらのアプリケーションでは、メッキなどによるコート品が使用されます。主にABSプラスチックにコーティングをした部品です。
銀色のコート面は、様々な金属層を交互に重ねた多層膜になっています。部品面を活性化させてから、15~80μm厚の銅皮膜をコートし、その上に10~40μmの光沢と準光沢のニッケル多層膜をコーティングします。最後に、厚さ1μm未満のクロムコーティングをほどこします。
膜厚の非破壊検査を行うには蛍光X線方式のFISCHERSCOPEが使用できます。
測定手順と素材の組み合わせにもよりますが、約100μmまでの合計膜厚を測定できます。
COULOSCOPE CMS2を使用する、アノード溶解による電解式では、破壊式でより厚い膜厚が測定できます。この破壊式測定では、個々のコーティングを表面から順番に取りのぞいて測定します。膜厚は、溶解時間、電流値、溶解面積、および素材の密度から計算されます。
各コーティング層を別々に独立させて溶解するため、最適な電解液をそれぞれのコーティング層に使用します。電解液のシール用リング直径は、最上層が一番大きく、その後順次小さくしていきます。

新型V18スタンドは、フィッシャー製品では標準スタンドですが、高精度なサンプルの位置決めができるタイプです。右のイメージは、外装用トリムストリップの膜厚を、V18スタンドとCMS2を使用して測定した時のものです。
さらに、その測定スポットを共焦点顕微鏡で検査しました。この2つの方法で得られた測定値は、ほぼ一致しています。
この結果は、同じ種類の部品を大量に非破壊検査できるエックス線装置の校正に使用できます。

自動車用トリムストリップのCr/Ni/Cu多層膜の膜厚測定
Cr | Ni | Cu | |
電解液 | F1 | F6 | F4 |
シールリング (直径 [mm]) | 3.2 | 2.2 | 1.5 |
溶解時間 Cu [μm/分] | 0.5 | 20 | 20 |
測定ポイント1 [μm] | 0.62 | 39.9 | 41.2 |
測定ポイント2 [μm] | 0.59 | 40.0 | 41.8 |
測定ポイント3 [μm] | 0.60 | 40.2 | 42.1 |
共焦点 (MP2) [μm] | 0.60 | 40.12 | 42.01 |
ベネディクト・ピーター博士